このライトノベルははずれがなくて良い。
いつも楽しみながら、ITビジネス業界を垣間見ることができる。
こういうビジネス系ライトノベルというジャンルを今後とも切り開いていって欲しい。
今回は、サービス開発系のお仕事、
8巻の後日談だと、スルガシステムの危機はある程度解決したと思ったが、
9巻になると、その危機が、思ったよりも大きいものだという風に描かれて、
そのために受注生産ではない、レディメイドの商品を販売するサービス開発責任者になっていた!
9巻も続けば、だんだんと工兵が戦績を重ねてきて、仕事大好きな人間になっていく。
技術者としても、ビジネスマンとしても熱度が帯びてくるようになった。
純粋に成長物語として描かれているが、だんだんと工兵と共感を持てる部分がなくなってきて手の届かない世界に飛び出してしまっているようにも思える。
対戦相手もゲストヒロインも今回は出てこない巻。
いろんな仕事を抱えて、既存の仕事で手一杯で回らないということは、文章だと書かれるのだが、その心理描写はほとんど書かれないから工兵の抱えている仕事量の見積もりや仕事に追われている焦燥感がよく見えないという欠点がこの巻にはある。
また今回の既製品サービス開発の種が、ライバルのいない世界を見つけ出しそこに先行投資をすることなのでライバルは描きようがない。ライバルがいないことはゲストヒロインもいない。若干IT人材派遣業のひどさを描いているが、そこを書くなら一巻丸々使ってほしいなと思う。。
そして、このライトノベルが日本の会社のもつ不条理さに物語でタンカを切るというところに痛快さがある。
今回の不条理さを切りたおしていく工兵、立華、梢たち技術者たちの敵は、
身内にいる六本松社長そのものだったという話。
この巻で読んでいて痛快だったのは社長の新サービスの責任を従業員に追わせて心理的に逃げようとするところを言葉の会話できちんと閉じ込めた点。
新サービスの開発に社の運命を掛けられるかを工兵が社長に問われて、工兵が逃げ出すところを、立華が社長に向かって、新サービスの開発に社の運命を掛けるかどうか決めるのは、サービス開発担当者じゃなくて、社長あなたですと迫るところは物語の山場。
社長の肚のくくり方もかっこよかったし。
で、すべてが幸せになり、次巻が短編集、温泉旅行ということで、
ライトノベル的な全方位ラブコメで気持ちをリフレッシュできそう。
11巻まで手に入れ、9巻まで読了。
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