日本のキリスト教会のなかできちんと出世してきた女性の本
宗教の団体といえども人間の集合体なので団体内での政治活動とは切り離されないことを教えてくれる本。
内容はとても素晴らしいものです。人間的な愛に満ちあふれている。そして85歳の高齢になった今時点の気持ちを書いてくださっている。
幻冬舎が出しているだけあって、読者が読みやすいようにきちんとした編集も加えられている。
ただ一点、衝撃的だったのは、渡辺和子氏は、2.26事件で亡くなった渡辺錠太郎の娘さんであり、その事件のときに皇軍派によって、自分の父親が目の前で殺害された瞬間を見るという幼いときにものすごい経験をされているということ。
戦前の大事件の生き証人の一人であられたこと、
リベラル派だった渡辺錠太郎の娘という事で、
当然ながら西洋思想の素養があり、
どういう経緯だったかはわからないが、米国に留学
そして35歳にて学長に就任というエリートコースに乗られた人であったこと。
日本におけるキリスト教には旧勢力の宗教である仏教とちがい、渡欧、渡米経験をつんできたリベラル派のエリート階層が信者というイメージが強い。
押田成人神父の講演のテープを聞き、押田神父がカトリックの修道士だった為、大病を患った時、戦後の貧しい時代でもたくさんの薬の投与を頂き、命を保つ事ができたこと、
そこからキリスト教会は貧しい者とともに有り続ける事が大事と思うのに、カトリック教会はどうしても上流階級の人向けになってしまっているということで、栄達の道を考えず、神学博士なども断り続け、高森草庵で生活された神父様の講演の言葉がずっとこの本を読んでいて響いていた。
こういう宗教関係者の発言は文面で追うよりも
肉声やお顔を見ながら感じ入るもののほうが大事なんだとおもう。
それだけのメディアはそろっている時代なのだし。
あと、
こころに残ったところは、渡辺錠太郎が常々言っていたという「軍隊は強いほうがいいが、戦争は勝っても負けても国力を疲弊するだけだ」という言葉
こういうことを言っていた人が殺されてしまった世の中。
どうしても昭和史は怖くて読む事を避けていたが、
そういう歴史を積んできた日本の歴史を見直したくなった本。
昭和天皇の実録が公開されるので
http://www.asahi.com/articles/ASG1B4307G1BUTIL010.html
そのタイミングで、数々の昭和史が更新されていかれるのだろうな。
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