政治にうごめく日本近現代史がわずかながら理解できた。
内モンゴル自治区 |
一度だけ内モンゴルの草原で、数日だけ馬を走らせたが、
あんな真平らのところで歩兵戦をしたことにビビる。 殆ど草原しかなく、
日本国内の空気とは全然ちがく、乾燥し、木の影も少ないところで
武器弾薬、食料水の補給に苦しむなか戦ったのか。。。
虹色のトロツキー1巻
昭和10年代の満州を舞台にした日蒙2世が満州国で翻弄されていく話。すごく面白い。歴史上の有名人と、架空の人物で主人公、日蒙混血のウムボルトが織り成す物語。一巻はまだ序章。
石原莞爾と辻政信のあいだに人生を翻弄され、自由闊達な国策大学という奇妙な大学「建国大学」との学生たちの仲間意識というものにひねくれながらも愛着を覚え始めている時期
虹色のトロツキー 2巻
徐々に話が展開していく。 ウムボルトが建大を蒸発して故郷に戻り、孫逸文と接触する。銀巴里の歌手と会う。そこに奉天の楠部が張っており、通遼の日本軍が中国の農村に潜んだ孫逸文一派を取り囲む。逃げる三人。ジャムツの逃げるシーンはガンダムを彷彿させる。建大に戻るウムボルト。そこで日本人の青年たちの馬小屋立てこもり騒動があった。このあたりは青春記。安彦良和はこの話を青春記にすることも考えたらしい。
虹色のトロツキー3巻
ハルピンで、ユダヤ系のなかにもソ連のコミュニストがでてきた、ユダヤ系を使って沿海州にイスラエルをつくろうと画策する辻少佐。ウムボルトは知らぬ間にトロツキーとユダヤ系ロシア人のあいだの最重要人物へになっていった。運命がどんどんと翻弄されていってしまう。
この巻のハイライト楠部大尉とウムボルトの戦い。合気柔術創始者の植芝の弟子であるウムボルトが楠部大尉を倒し殺してしまうシーンはぐっときた。日本人を殺せば殺すほどあなたの日本人の血は薄まるのよの麗花の言葉は重かった。そして宗将軍のもとに合流し、抗日義軍を率いることに。大きな流れに翻弄されていく人生はキツイが、漫画として凄まじく面白い。
虹色のトロツキー4巻
初っ端から満洲国の重鎮が集合。小説でも漫画でも自分にとって初めての満洲の物語。
松岡洋右の南満州鉄道の列車「あじあ」の中での足の投げ出し方などは性格が出ていて読んでいて楽しい。画で説明するのは面白い漫画だ。
だんだんと軍部内部での対立軸もはっきりしてきた。本流が日ソ同盟で中国、英米と戦争派。辻少佐や石原莞爾が中国同盟で英米と戦争回避だったのか。川島芳子、李香蘭、麗花、魅力的な女性陣が勢揃い。
馬を寝かせて奇襲作戦。モンゴル馬をあそこまで乗りこなすのは大変だろう。植芝先生登場。やはり一番かっこいい。匪賊からウムボルトを取り戻しにきた、安江大佐が次に活躍していく。
虹色のトロツキー5巻
ウムボルトの人生はどんどんと変遷していく。たった一冬の間に人生が一変してしまった。ウムボルトにとって一番大事な出来事である「父、深見圭介の計画」がだんだんと見えてくる。
トロツキー計画の答えを見つけ出す為に満州国の興安軍少尉となる。敵と味方を行き来していく人間模様。麗花が偽満の将校となったウムボルトの元を去って消えてしまう。満州国興安軍ウルジン少将など、モンゴル系軍人がたくさん出てくる。現在の外蒙古とロシアと内蒙古にわかれたモンゴル民族の歴史が伝わってくる。ウムボルトが兵士とモンゴル語で話すシーンにモンゴル文字が振られているのはすごい良かった。キリル文字ではなかった時代だ。モンゴルの分裂した感覚をすごく感じることができた。
虹色のトロツキー6巻
とうとう魔都上海にいる見世物トロツキーと、ウムボルトが接触した巻。
おやじを殺し、母を犯して殺した人間を探すという目的がウムボルトにはつきまとう。それが辛い。
そんななかで、清涼剤として建国大の恩師中山優先生との再会。建国大がとても素晴らしい存在として書かれている。学友との議論、友情、土地を愛することなど、精神の生まれ故郷として、学校を素晴らしい存在として書いている。ウムボルトの人生で最も幸福だったんだろうなあと想像してしまう。
安江大佐の子供が書いたラストの解説で、安江大佐の言葉に胸を締め付けられる。
「日本をこのようにしてしまったのは、我々年配の者達の責任だ。俺はその責任を取る。ソ連が入って来たら拘引されるだろう。俺は逃げも隠れもしない。」
虹色のトロツキー 7巻
ウムボルトが麗花を連れて建大に帰還。麗花を義父の所に預けることになる。日蒙二世、偽満と麗花に呼ばれ、義父は日本軍に親密であること、ウムボルトの中に流れている日本人の血を嫌悪し、麗花を押し倒せざるえなかった苦しみが感じられる。日蒙双方の意識からは五族協和は成し遂げられる気配は感じられない。
ウムボルトはノモンハン戦線へ。満州国軍蒙古少年隊に配属され、興安軍としてノモンハンへ出撃した。
外蒙とソ連邦 満州国軍と関東軍 蒙古人を二分しての戦争が勃発。
戦場の逃げ場の無さ、自分には想像しかできないが、こんな風に命がそこら中で消えていく感じなのか。
戦場にでて、戦車など近代兵器に差があるなかで戦う兵士たちはどうだったのだろうか。
辻権作が戦場に向かう際、満州国軍が離散した兵に囲まれ、国軍いまだ成らず はぐっときた。
関東軍も自分と同じ日本人だということを忘れられないなと思った。
虹色のトロツキー 8巻 完
読了。本当に面白かった。戦争てマジで怖い。こんな風には決して自分は戦えない。
ウムボルトのような青年はたくさんいたんだろうと考えを巡らせてしまう。。。
大きな運命に抗って生きた青年がいたんだろうという想像力が駆け巡る作品。
現実に起こった事件や時代を鮮やかに描くために、空想の人物を組み合わせた作品だった。
空想の人物だから現実の部分を描きれない為、ラストは戦死しかなかったのだな。
ノモンハン事件終結後、すぐに第二次大戦勃発。1939年にとうとう世界大戦が始まった。
最後の1990年代日本の終わり方は、ノモンハンと自分たちの時代は陸続きなんだと改めて思った。
そして秋葉原のシーンと安彦良和本人のデフォルメ絵が出てきたシーンで鳥肌が立って、わずかに希望を感じさせてくれる読後感が良かった。
これがエンターテイメントなんだ、凄いな。
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