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宮本武蔵 吉川英治著
手首骨折して、その勢いで翌日にiPadを購入し、年末年始に青空文庫のアプリを探し
年始の入院時は、ラブライブスクールフェスティバルhttp://lovelive.bushimo.jpでリズムゲームをやるか、iHD文庫で青空文庫の吉川英治を読むかのどちらかだった。
宮本武蔵の話というのは、
歴史的人物を書く歴史小説なのかな、架空の人物を書く時代小説になのかな。
作家の想像の余地が多分にある人物。
吉川英治とその昭和の時代のなかで創作された最強剣豪宮本武蔵の青年時代を書いた長編娯楽小説。
漫画から宮本武蔵に入ったので
バガボンドの印象の武蔵たけぞうと又八のイメージで読み始めた。
そのキャラクターの外観や造形イメージは読み終えてからも変わらなかったが、
バガボンドは吉川英治原作からさらに独自色を出している事が驚きだった。
沢庵和尚に命を助けられて野獣のように剣の道に突き進んだ前半。
そして吉岡一門へとの試合。
伝七郎との三十三間堂での雪のなかでの決闘の描写
雪が目の前に降ってきているかのような感覚になる。
そして、遺恨試合で13歳の大将を真っ先に斬り殺してしまった事に対しての心の葛藤
漫画化されていることでイメージが浮かびやすいとはいえ、小説なのに心にダイレクトに浮かび上がる映像。
そして、この青年の苦悩とそれに真摯に向き合い、旅を続ける生き様。
師は自然というかたちで千葉で氾濫する開拓に取り組む姿。
そのなかで幼馴染として登場する、男性の理想を盛りに盛ったお通という女性。
宮本武蔵を追いかけ、何年も旅をしていく。そしてわずかながらの邂逅したシーン。
こうして二人を合わせてくれるシーンを作ってくれた事にどれだけ自分が嬉しかったか、
ものすごく感情移入することができる小説。
読み始めて吉岡一門との決闘まで読んでしまったあとは、
もう止まらなくなり、ここまでで寝よう、寝ようとしても読む事を止めることができず
朝までずっと読み続けていた。
この小説は、
宮本武蔵が当てもない武者修行の旅をして、
それを追いかけ、探す旅にでるお通
自堕落に人間らしい一面が一番出る本位田又八の居場所を求めた旅
神から授けられた天賦の才と如才ない処世術をもつ佐々木小次郎の旅
武蔵とお通を本位田家の敵として追いかける本位田家のお婆の旅
この5人の旅があちこちでニアミスをして、
あるときはくっつきながらも運命の悪戯か離ればなれになってしまうことを繰り返し、
最後の最後 巌流島の戦いで 登場人物すべての旅が集結、そして終わる。
創作された人物たちだが全てのキャラクターそれぞれに魅力的な人間で、
それが最終盤で5人のメインキャラクターが旅の目的を解決し、そして旅を終え、
それぞれの立場で豊後小倉に行き巌流島の戦いを見守る。
その巌流島の戦いも、これまた魅力的で、何度も吉川英治原案で映像化されているから
こころのなかの心象風景として残っているのだ。
昔懐かしい話を読み返している感じで、結末は当然知っているが、その通りに動いていく
武蔵と小次郎にドキドキしたりする。
すでに知っている内容なのに、こんなにドキドキ、ワクワクしながら読み進めることが
できるなんて読み始めた時は思ってもみなかった。
この本から教訓めいたものを得ようとするのは間違っていると吉川英治も井上雄彦も言う。
実際に存在しない理想と化した宮本武蔵なのだから。
最強の娯楽小説として、この本はずっと読み続けられていくのだろうな。
吉川英治の本は、次は三国志か太平記かと聞くと横山光輝でほぼ忠実に漫画化されたが、
それを読んでいても余りあるくらい三国志は面白いということなので三国志を読み始めた。
青空文庫、iPadの組み合わせのおかげで快適な読書ライフを送ることができる。