タイタンの妖女 爆笑問題太田光 推薦
最初のページに、著者が解釈した箇所以外はすべて事実が書かれていると謳っている。
未来に行われた火星地球戦争
「ウィンストン・ナイルズ・ラムファードの火星小史」の著者、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードと、
ある役割を担ったマラカイ・コンスタント。二人の人物の出会いから物語は始まる。
様々な架空本を引用していき、最大の幸福とアクシデントに見舞われたマラカイ・コンスタントの人生史を綴っていく。
「タイタンの妖女」は火星地球戦争以後半世紀以上の研究が纏めてあるといった体裁を取っている。
未来の話である火星地球戦争のさらに未来から書かれたマラカイ・コンスタントとウィンストン・ナイルズ・ラムファードの伝記という姿をしている。
終章まで終わり、読み返してみると、最初に伏線が張り巡らされている。
二度読みをしているとニヤケてしまった。二度読みは一度クリアしたダンジョンをなぞっていく感覚。
一度読みとは全然違う感覚になる。
物語は宇宙船での、空想旅行記の作りになっている。
架空の戦争、架空の宗教、架空の科学、架空の生物。空想で塗り固められている本。
なのに、それぞれが否にリアルに迫ってくるのが困ってしまう。ディテールが細かいし、綺麗なのだ。
出てくる生き物達が変にリアルな精神構造をしている。架空の世界に読者を紛れ込ませてしまう。
結果、宇宙に放り出された気持ちになる。一緒に冒険をするハメになる。
それが、タイタンの妖女という作品の本当に良い所だ。
また筋が不明瞭なことを退屈させないくらいに、言葉のテンポや面白い造語が沢山でてくる。
そんな著者カート・ヴォガネット・ジュニアの遊びに付き合う感覚もある。結果としてエライ遠いところまで運ばれるが。
好きな言葉は p232 「この極度に挫折を味わった男が哲学を書いた唯一の火星人であり、この極度に自己挫折的な女が、詩を書いた唯一の火星人だったという事実は、一考に値すると思うね」
ラストはとても心地良かった。太田光の言うように、このオチかよ!と読書中は感じるが、読み終わるとあれで良かったなと思える。
全てにおいて映像が思い浮かぶ凄い文章だった。本なのに目の前にCGが飛び交う感覚になる。
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