天地明察
お医者さんからこれは面白いと言われ、その日に買って、その日に読み終えた。
そのお医者さんは頭はすごくいいのに、こんな天才に自分はなれないよと言っていたのが印象的
渋川春海の日本独自の太陰暦を創る為の物語。
一番最初の渋谷の金王八幡神社という所に掲げられる絵馬 、算額奉納、
この導入のおかげで、これが時代小説であり、自分たちの国の過去の物語であることが繋がった。
雁鳴きて 菊の花咲く 秋はあれど
春の海べに すみよしの浜
雁が泣き、豊穣な秋はあるが、自分だけの春の海辺に住み吉たる浜辺が欲しい。
己にしかなせない行いがあって初めて成り立つ人生の浜辺である
秋を飽きとかける。
これで、ぐっと掴まれてしまった。自分の心情とそっくりという気持ちに読者皆がさせられたと思う。
解答さんという謎の和算の天才武士が関孝和という人間で、尚且つ同い年であるという。
同い年というのは、本当に苦しい。部下が年上でも、上司が年下でも大丈夫だが、
同い年の上司というのだけは、どうしても上手く接する事ができなかった。
それだけ、本当に意識をしてしまうのだ。その天才との対決に、無術という問題を出し、腹を切るほどの苦しみをずっと胸に終いながら春海は進んでいく。
そして、若者は幕命を受けて、天体観測の旅にでる。
そして、そこには60に近い二人の上司がいる。彼らの天体に対する思いや、その旅路のなかで
思いを伝播されていく。
そして、江戸に帰り、今度は政治という舞台で翻弄されていく。
それにこの春海はだいぶ翻弄され、そして六番勝負で負けてしまい、絶望の縁に追い込まれてしまう。
その中で、天才関からの叱責を受け、最愛の妻えんを再婚相手に向かい入れて、再度暦の研究を勧めていく。そのなかで、間違っていないと思われた中国の授時暦自体が間違っていたという事を
伝えられる。
このくだりがこの話しの名場面だった。この怒鳴った関、権力に恵まれず、才能をフルに生かしきれなかった天才が、春海に託したシーンは怒涛の展開だった。
その後、研究を勧め、再度改暦の儀までこぎつけて、その時に京都で様々な政治的活動をすることで大逆転勝利を収めるという結末だった。
最初の旅と、敗北した改暦の儀から、立ち上がってきた。ここがこの小説の魅力だった。
勧めてくれた医者も、その部分を伝えたかったのかもしれない。
2010年5月23日日曜日
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