アフターダーク(村上春樹)読了
やっぱり小説は良い!別世界に連れて行ってくれる。
この本は、深夜の11時56分から朝の6時52分までの半日を舞台にした小説
単純明快に真面目で頭の良いが、美人の姉にコンプレックスを抱いている浅井マリ19歳の外国語大学(中国語)が、深夜の街の都会という異界との接触と、6時40分に太陽が出てからの明るい日常の世界へ帰還した、たった半日の冒険譚
そのなかで、姉を再発見していったりする。彼女の異界への導き手として高橋やカオルという保護者が付いてきてくれるという風に簡単に読んでしまった。
そうしないとまったく意味がわからない小説になってしまう。意味をどう取っていいのかわからないが、取り敢えずマリとエリの物語として読めば筋道はきちんと通る。
いつもどおり、あちらの世界とこちらの世界を行き来していくのだが、
あちら側が、ラブホテル 「アルファヴィル」という現実にある存在で
コチラ側が、デニーズやすかいらーく 自宅が 舞台
異世界というのが殆どでてこないのが村上春樹にしては珍しかった。
唯一あるとしたらお姉ちゃんが入り込んでしまった世界の切れ目として、テレビの中くらいか。
ラストはもどかしい終わり方をするが、希望の種だけは残していっている。
短編小説のようにすらすらっと読める久しぶりの村上春樹本でした。
気に入った言葉は、
高橋の言葉P19
浅井エリみたいなすごい美人とデートできたらいったいどんな気持ちがするんだろう?知的好奇心? けっこうココがツボに嵌った。
P138 裁判という制度そのものが僕の目にはひとつの特殊な異様ないきものとして映るようになった
裁判自体を 深い海の底に住む巨大なタコ と例えていた。この権力に対するイメージは村上春樹一貫のテーマな気がする。一人では対抗できない。どう逃げ切ろうとしても、切り落としても何度も追いかけてくるイメージはすごくわかりやすい。
P243 コオロギの言葉
あんたがお姉さんに対してほんとに親しいぴたっとした感じを持てた瞬間を思い出しなさい。
(中略)一生懸命思い出そうと努力していると、いろんな記憶がけっこうありありとよみがえってくるもんねん。
0 件のコメント:
コメントを投稿