2014年4月4日金曜日
創造的人生10年のあいだに創られたシュナの旅
シュナの旅 宮崎駿
サイズは文庫本なのだが、中身はフルカラーで書かれている。
1983年作。宮崎駿自身が絵を描き、水彩画で絵にいろをつけている。
とても良い作品だった。
貧しい谷の集落の王子が貧しさを嘆き、ある死にかけた旅人が教えてくれた
豊かな実りをもたらしてくれる黄金の穀物の種を探しに旅に出る話。
この黄金の穀物の種を探しにいく、その事自体が命をかけて行うことになる
旅をすること、そして主人公の純粋な精神と勇敢さが心地いい。
ヒロインは途中で出会った奴隷に売られそうになった少女とその妹
そして、ようやく黄金の穀物を生み出すところにいった時に起こる大事件
そしてエンディング
たった150pくらいの中にいろんなものを詰め込んでくれている。
こういう旅の物語はどうしても人の一生と照らし合わせて読んでしまう。
旅をすることの辛さ、危険さを存分に感じさせてくれる。
そして若者という存在の力強さ、無鉄砲さ、勇敢さ
旅をするごとに黄金の穀物を探すことよりも命を保つことへの困難さが増してくる。
生きながらえる為に命を殺し、他者が生きながらえる為に殺されそうになる。
旅は、無謀なものにも思えてくる。伝説、伝承を信じて旅をしていくのだから、
読んでいる側は、この困難さを一緒に連れて行ってくれる。
そして、人間の残酷さも見せてくれる。
そして人の気高さも。人の愛情も。
ひとつの物を追い求め続ける辛さ。死地へ飛び込む勇気。他者を助ける精神。
この黄金の穀物は、それ自体素晴らしいものだが、罪深いものでもある。
物語の世界全体自体、絵本のような形で淡々と進んでいくのだが、
読んでいる側はドキドキしながら読み進めていく。
宮崎駿の創造的人生の10年間の時に作られた作品だと思う。
また、金額的にもフルカラーで500円という破格すぎる値段
地味すぎて映画化困難と自身は言っている。
1983年当時では厳しかったのだろう。
自分の創りたいものを作れるようになるような時期ではなかったんだな。
作りたいように作れるようになったら、自身の人生の終わりが近づいている。
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