戦争する脳 計見一雄著
この本の書かれている事は、一人の精神科医が現場で経験した事を元にして、それに戦争時の脳のあり方がこうだったのではないかと論じている本。本人がいうように、床屋談義なのかもしれない。
基本的なメッセージは、スタンドアローンの脳みそで、一人で考えた本や思想に対して信じ込むな。むしろ肉体性を大事にしろというスタンスで望んでいる。
答えは肉体がよく知っているという事だ。
基本的に脳は、欲望と攻撃で、できている。
それを交通整理するのが、前頭葉「ここは、否定する脳。」だから、脳みそに優劣はなく、肉体の
優劣もないと評する。(これが本当かどうかは知らない)
衝撃は、ポジティブシンキングは、そのまま現状把握を拒む。
こうありたいが為に自分にとって不利な情報を否認してしまう危険性がある。
ポジティブシンキングについて、願い続ければかなう、その弱点をきちんと書いている点に凄く好感を持った。
戦争屋が、ポジティブシンキングすると、破滅する。
経営者や政治家は、軽い躁状態だといいかもしれないが。
イラク戦争時のラムズフェルドを例にだし、否定的情報を一切無視してやっていたことを例にだす
精神科医らしく?観念を信じない。肉体が伴っていない考え方には否定的な意見
スタンドアローンの脳みそはマトモなことを考えないと切り捨てる姿は心地いい。
よくいわれる自由意思はあるかないか、脳が考える前に体は動きだす。脳が出せるのは、それを拒否する、動くのを止めること。その間は0.3秒。だから、脳の役割は、ネガティブコントロール。ダメージコントロール。をしている。生物が持っている攻撃欲求と、愛着欲求を、どうコントロールするか。やるという判断は出来ないが、これはやらないという判断を下すことは可能なのだ。
CEOとは、もともと軍艦の副艦長をさしていたらしいのだ。なかでの、ロジスティクスや、武器の用意、ご飯の用意、諸々の役割をやる地味な仕事だった。それが何時の間にやら、起業トップを表す言葉に変わった。
父君が海軍士官だったこともあり、軍事関係のネタが多い。
強い軍隊は、まず始めに便所の確保からはいる。そして食事。
殆ど肉体の事ばかりだ。
もともと、著者は、緊急精神科医。
そこから、海兵隊のイラク戦争時のPTSDについて書く。
戦場とは、精神が疲弊する場所。ここでは、疲弊した戦士を送り返すのではなく、現場近くで、7日間の睡眠と休養を与える。
現場に近くで、やらないと兵士が仲間を裏切った自責の念で、逆に傷付き、難治化する。
緊急介入と、数日間の肉体疲労の除去これでだいたいが現場に戻れるらしい。
中隊が、前線で、闘える日数は90日が目処。肉体的損傷、精神的疲弊でこれ以上は、不可能
精神的疲弊のみならば、210日が目処
睡眠は、48時間以上寝ていなければ、ほぼ脳が機能しなくなり、72時間でアウト
脳の本ながら、精神よりも、肉体やフィジカルを重視する。
日本の本で、よくありがちだ。でも、上手く実行できない。さすが現場の人間が書いた本だ。
あと、この人が素晴らしいのは一人の人間の考え方それだけ一つを正しいと思うなよ。
と言い切っている所だ。
そして、現在のシームレスな日常という戦場。そこにどれだけのストレスがため込んでいるのか
そんなことを少しだけ匂わしながらこの新書は終わった。
いい本だった。肉体の重要性を説く精神科医はとても健全だと思う。
そして、軍事への造詣のある精神科医というのも少ないだろう。
この人の本は続けて読んでいきたい。こうやって良い作家にめぐり逢えたら、著作を殆どすべて
読んで、自分の血肉にする事が大事なんだ。
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