2013年5月7日火曜日

塩野七生の時事コラム集2006年から2009年


日本人へ 国家と歴史編

時事問題をローマの歴史と絡めて説明する塩野七生流の文章

特に最初の後継人事について最高のものは、イエスキリストから初代教皇ペテロへ
ユリウス・カエサルからローマ初代皇帝アウグストゥス

両方共、相手の持っていないものをもつ正反対のものを選んだのだ。
ペテロは頭の切れないペテロをトップに据えて、回りの警戒心をとかせることに成功した。
アウグストゥスは病弱だが、無理のしない冷徹な政治家に渡し、ローマ帝国の礎を作った。

同じ事を小泉総理から安倍総理にできただろうか という時期の本だから
うまくできたのかどうか、一年で放り出したのだから失敗だったのだろう。
でも、その失敗が2013年の今となっては力強いリーダーとしての安倍総理の復活劇に繋がっている。

後継人事の難しさを感じる。素質はあったのだろう。それでもその重圧に耐えられなく辞めざるえなかった
第一次安倍内閣。その経験が二次内閣に繋がるのだから、歴史というものは面白い。

内容的には、ローマ人の物語を書き終えての後日譚 書き加えたいところだったり説明をしたいところを書いている。
あの15年にわたって毎年一冊物語を発行するのは苦労したかといえば、(とくに滅亡時)そんなことはなく
よくもわるくも歴史の愉快な男たちと過ごせた日々だったと書き記している。

歴史というのは流れさえ感知することができるようになれば、半ばわかったようになるようなものなのだ。
ローマはこういう歴史をたどった。紀元一世紀は力はあっても洗練度がなく、二世紀は力とともに洗練度も最高潮になる。
三世紀は力は衰えただ洗練度は最高を維持していく。

靖国神社問題についても語っている。自分が靖国に参拝したときに感じた個人的な意見だが、ここは死者の霊魂を鎮魂する
場所であることは間違いない。それに大してA級戦犯だろうが、なんだろうが戦争で亡くなった人を弔うのは必要だと思う。
ただ、隣にある遊就館は、大東亜戦争の日本の戦争の記録を残していることが問題だと思う。
それは、鎮魂の場所である靖国神社には似合わないものではないだろうか。ここは死者と生者の出会う場所なのだから。

本では第一次安倍内閣を買っていない。誠実のあまりに単純すぎる。民主主義の政治家は感性にうったえて得た票を
理性に基づいて権力行使しなくてはならない。「美しい国」という目標の抽象度の高さが人々には伝わらなかった。

その後、歴史の示す通り、一年に一回政治家が代わり、そのたびに日本の国力を落としてきて、
再度安倍総理にバトンが回ってきた。こんどは「美しい国」という抽象度が高いことは言わず、インフレ率2%経済成長3%と
いうような明確な目標を立てる強い総理大臣、期待の持てる総理大臣として返ってきてくれた;

ローマ皇帝たちを日本の大臣にしてしまうという遊びも面白かった。いまだローマ人の物語15巻読みきってはないけれど
それでもこういう人がいたのかという想像ができて楽しい。

こういう外国から日本を見てくれる日本人というのは、変にドライか愛国者のどちらかになるかのどちらかというが、
このひとは愛国者の部類ながら、外から見る情けない日本を書いてくれる(イタリアももっと情けないが)
だから読んでいて、溜飲が下がるがしながらコラムを読み進めていくことが出来る。
読んでいると、日本はほとんど注目されていないのだな。関心がまったくない。日本がアフリカに対して感じるくらい関心がない。
いくら地域的に真逆でも、日本はヨーロッパへの関心はまだ持っているのに、反対側はもっていないのか。

小沢一郎に大連立を福田総理と自民党との大連立を薦めているのは、先見の明があったと思う。
この時期に連立しなければ民主党は政権を運営できなかった。
負けた側からの手は受け取れないが、勝った側から差し出された手は受け取ることができるからだ。

2006年から2009年あたりのイタリアと日本の実情をローマ人の世界を見てきて返ってきたおばさんの目から読むのは楽しい読書経験だった。

日本人へ リーダー篇
http://yasu0312.blogspot.jp/2013/04/blog-post_2.html
の続編に当たる。

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