2011年11月3日木曜日
死ぬことと見つけたり 花の慶次原作者 隆慶一郎著
隆慶一郎
「死ぬことと見つけたり」
種本として、佐賀藩の山本常朝「葉隠」
「花の慶次」の原作本を書いた隆慶一郎の本らしく、清々しい漢っぷりの主人公がでてきた。
男が憧れる漢を描く。読み途中で花の慶次みたいな奴だなと思ったりするのだが、
花の慶次よりも、佐賀藩浪人 斎藤杢之助は、もっと「生きながらにして死んでいる人」であって、
初代藩主鍋島勝茂たち 常世の権力とは別の公精神で生きている人っぽく書かれている。
それでも、浮世離れしているわけではなく、
マキャベリよろしく目的の為ならば暗殺も辞さず覚悟はあり、
武士として最高級の能力を持っている。そして、起こした事件への責任の取り方もふまえている。
決して自分の行動がどういった影響を及ぼすかわからない愚図ではなく、
広く見通し、最適の解の時躊躇せず自らを死地へ踏み出せる大人として描かれている。
その精神が「死ぬことと見つけたり」なのかなと自分自身は理解した。
主人公斎藤杢之助は、毎朝、自らを精神的に死人にすることで
藩祖鍋島直茂の時代のような武士として自分の力量と器量のみで生きてきた
侠気の精神を保っている漢として描かれる。その姿は武士として理想の姿なのだが、、、
関ヶ原の合戦後30数年たち太平の時代にはそれが不調和を呼ぶ。
そこが物語として勧善懲悪物にもしてくれて、読後感をすっきりもさせてくれる。
そして、この小説はラストのオチがすごい。葉隠の精神にぴったりの終わり方すぎて感動してしまった。
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