「渋滞」の先頭は何をしているのか? (宝島社新書 291)
新書版 文字も減らして軽く渋滞学をなぞってくれる。
渋滞学の理系的部分に切り込まず、文系に応用していった姿は素晴らしい。
理系のひとの文章は本気で書いたら文系の御託には叶わない。
基本的には、
渋滞学 (新潮選書)の部分を新書に焼き直していた本でした。
同じように渋滞学から世間を見ていくというのなら
シゴトの渋滞、解消します! 結果がついてくる絶対法則
のほうが自分の趣味にあっていた。なにより第三部社内の渋滞なくしますという章で、
彼の苦労してきた人生が語られている。理系で理論をやっていたが、食い扶持が無くなって
どうやって生きていくか教職への就職活動が上手くいかない日々が続いたところは泣ける。
渋滞学の肝は流れをスムーズにしていくために適切な距離を空けるということに尽きる。
それを仕事術に応用して、無理やり詰め込まないようにする。
計画を立てる。
時間割をつくる
外段取りをしておく
長期の仕事と短期の仕事を組み合わせて進める
個人個人良い仕事をしていくときはぐちゃぐちゃになるまで、悩んで苦しんでこそのオリジナリティがでてくると説いている。ぐちゃぐちゃになっても、元のポジションに戻せるようにある程度の形作りや、時間で区切ってダラダラしすぎないようにする。そうしないと人間はぐちゃぐちゃに耐え切れないからだろう。
自分は計画を立てる重要性はアニメ制作会社で学んだ。そうしないと永遠にゴールが見えない作業に取り組まざるえなくなるんだ。
二章の部内の渋滞解消します
ビッグマウスの薦めなんかは、先生として、研究者というよりも、指導者としての自分のスタイルをもっているところが良いなあと思う。二章は先生の研究室の運営の仕方を具体例で紹介している。具体例が多くてわかりやすかった。
一番好きな三章 社内の渋滞解消します
1+1+1=2 にならず 0.9+0.9+0.9=5 になるようにしよう
全力プレーではなく9割でプレーして1割を他者との関係性を上げるために使いましょう。
そして、白眉である 私は社会と繋がれませんでした。先生の苦労話。食べ物をもやしでどう暮らしていくか、寝床が無くなって友人の倉庫で寝泊りしていた話や、お風呂に入れなくて洗濯機で身体を洗っていた若い時代の話。
その中から出てきた答えはあまりに当たり前だけれども、勉強という繭のなかで守られていると忘れがちになってしまう
社会と繋がるためには個人は社会の難問を解決することをしなければならないのだ、とわかったのです。
どんなに優秀でも、その活動が社会に結びつけれなければ、勉強ではなく、商品、仕事 を提供できなければ社会での差別化はできませんでした、と語ってくれました。
ここの部分が一番感動しました。社会との関係をどう取っていくかを先生の経験談で語ってくれているので胸にぐっと刺さりました。